屠位置月

 仕事が忙しいのにかこつけて、アップが遅れてしまった。
今月は「屠位置月」。11月を「といちがつ」と読んで当て字にした。
これを見た方は、なんでこんな字を使うのんだと思われるだろうから解説をする。

 毎年今頃は横浜市青葉区在住の陶工をしている友人の所へ出かける。作陶展を見に行くのだ。渋滞が予測されるので、横浜駅の方を周って帰る事にした。横浜駅が近づいた時、ふと前に読んだ本「太平洋戦争 忘れじの 戦跡を歩く」に載っていた横浜大空襲の項を思い出した。写真は、平沼駅跡。1945年5月29日の横浜大空襲で壊滅的な打撃をうけたのである。軽く弧を描いてせり出しているのはかつての駅のホーム部分である。駅としての生命は終えたが、京浜急行の軌道を支える構造物としては現役なのである。いったんは解体が決まっていたそうだが、当時の横浜市長が遺構として保存したい旨を示し、中止された。現場は何の説明もなく、周囲をフェンスで取り囲んであるので、気がつかない人も多くいると思う。細部を見渡すと、大空襲当時の傷跡がいくつも見ることができる。
 この平沼駅が本来の存在意味を持たなくなったのにも関わらずそのままであること。戦争遺構としての第二の人生が送れていないことから、この場所に屠られたということで「屠位置月」というタイトルにしたのである。この旧平沼駅は煉瓦でできた構造物もあり昔の建築を知る上でも貴重な存在だと思うのである。
柔月     屠位置月      師走