あしたの城

 私たちがサロベツに移動した時(1986.6.3~4)にお世話になった民宿が「あしたの城(あしたのジョー)」である。写真はご主人の川上さん。九州のご出身だが、「北海道にこなかったらこんな家は持てなかっただろうなぁ。」と言われていたのが印象的だった。この時はお客はゆきたんくとのりたん(ゆきたんくの奥方)の二人であった。
 宗谷本線のお客の少ない列車の中でいろいろとこれからのことを話しながら豊富駅の向って揺られていた時のことである。「南稚内~、南稚内~。お忘れ物のないようご注意下さい。」「ん?、南稚内だって」聞きなれない駅名のオンパレードの中、豊富という地名はのりたんが勤めていた職場の地名と同じだったので間違える訳がないとたかをくっていたわけだがまんまと間違えた訳である。場所は北海道、ちょっと電車に乗ると2~3000円の世界である。当時若かった私たち夫婦はお金もあまり持っていなかったのである。しょうがないので車掌さんに間違えた旨を申し出たら、見せた切符の裏にサインをし、「これで大丈夫ですよ、お気をつけてね。」と言ってくれたのである。なんと北海道の人は優しいのだろうと思った。潮の香の強い南稚内の食堂で腹を慰め、再び列車で揺られたのであった。
時間は覚えていないが、夜暗くなった時豊富駅に到着、川上さんが迎えに来てくれた。雨が降っていて民宿への坂の途中で車が止まり、「車はこれ以上登れないからここから歩いてね。」ということで足元のぬかるみに気をつけながら宿の中に入った。
「いらっしゃい、疲れたでしょう。お客はあなた方2人だけだから楽にしてね。」
 とさっそく食事の支度をしてくれた。ご飯、おかず、味噌汁と手際よく出してくれる。のりたんが厨房に入り、手伝おうとすると、「座ってて、あなたはお客だからね。」と全部やってくれた。
 鮭の味噌焼きだったかなぁ。さすが北海道と思った。付け合せが粉ふきイモだったので頬張りながら「北海道のジャガイモは美味しいですね。」と知ったかぶりをしたら、「これはね僕の実家、九州から送ってきたイモだよ。」と「ははっ知ったかぶりをしてしまった。」といろいろな話をしながら時間は過ぎていった。「新婚旅行?」、「はい。(2人で照れる)」、「そおかぁ、ここは男女は別部屋なんだけれど、他に客がいないから同じ部屋で寝ていいよ。そうそうお風呂も一緒に入っていいからね。」やはり北海道の空気に触れるとおおらかになるのだろうか。私はこの時、北海道の住人になりたいと思った。
 そうそう、ここで驚いたことを一つ。夜に3人でお茶をしていた時のことである。コーヒーがものすごくうまかったのである。川上さんに「こんなにうまいコーヒーは始めて飲んだ。どんなコーヒーを使っているんですか。」と聞いたら「これだよ。」と言ってコーヒーの瓶をテーブルの上に置いた。そのラベルを見たら「ネスカフェ」だった(笑)
 「ちょっと、水を飲ませて」といって蛇口から水を汲み飲んで見た。そのうまかったこと。六○の水だとか、南アル○スの天然水などは及びもつかないほどうまかったのを覚えている。
 また「あしたの城」に行けば飲める。また行きたいものである。