ゆきたんく

 途中で視界が開け、住居のようなものが見えた。ゆきたんくは、「やったー、売店だぁ」と思って歩を速めた。その時、建物の影から女性がさっと出てきた。はっきり言って恐怖だった。相手は一茶について取材をしている学生のようだった。そこにジャージの黒ハーフパンツを穿き、黒のTシャツを着たヘビー級の男が現れたのである。私が驚いた以上に驚いたに違いない。平静を装いながら、距離は確実に広きつつあるのだ。しょうがないよな。逆の立場だったら自分もしそうしていたに違いないのだ。
 ここは売店でもなんでもなかった。一茶没後130年の、昭和31年に建てられたものである。