楽丸(落雁)

 私は善良な親孝行なので,全寮制の高校生だった。その寮で腹が減った時に誕生したメニューを。
 みなさん、「落雁…らくがん」というお菓子はご存知?あの、砂糖だか粉だかを固めたお菓子・・・。
 今回は、「らくがん」にちなんだお話だ。

 時は学習時間。
 だが勉強などする訳が無い。一日で一番退屈な時間なのだ。
 じゃあ、遊ぶか喰うしかない。
 寮生活は腹が減る。(こればっかり)寮の飯を食べ、おやつを食べ、タッパーラーメンを食べ、タッパー焼きそばを食べ・・・。ついに食べるものがなくなってしまった時。どうしようか・・・。

 机の中を見る。
   @ネスカ○ェのコーヒー
   Aニ○゛の粉ミルク
   Bココナッツサブ○の粉とかけら。
 腹が減ったからといって粉ミルクをペロペロ嘗めていたら、竹中尚人氏の若い頃になってしまう。

 「あぁ〜、腹減った〜!」

 時は学習時間。
 机の上にはノート、教科書、鉛筆・・・・・、鉛筆のキャップ。
 その時、上記の@ABをキャップに入れ固めたらどうだろうかという考えが浮かんだ。

 時は学習時間、
 頭を使わなくてはいけない。
 私は机の中から未使用のプラスチックの鉛筆キャップを出し、@ABを入れ、テッシュペーパーを当て、鉛筆のおしりでギュウギュウ押した。これでもかというくらい押した。何かにとりつかれたくらい押した。

 どうにか気が済んで、そのキャップの横っ腹をでこピンの要領でピンピン。
 そして机にしいたティッシュの上に落とす。
 「おお、塊ができた。」
 よし食べてみよう。
 「なかなかいける、香ばしいミルクコーヒーサブレ風味だぁ!」
 当たり前だってぇの(笑)、ねえ。
 甘味があるせいか、空腹が少し楽になったきがする。

 これがねえ、なかなか良かったんだけどねぇ。
 この時はねえ、たまたまうまくいったんだと思う。
 また、やろうとしてもなかなか上手にできなかったのだ。
 あの見事な塊は、たまにしかできなかったのだ。

 友達から「おい、あの何だっけ、固めたやつ。」と聞かれても名前なんかない。
 しかし私は咄嗟に「らくがん」と答えていた。
 
 家庭料理ではないが、あり合わせの物で空腹をしのぐ知恵を、生きる力を会得する機会を多く持てたことは幸せである。
 空腹が楽になるので「楽丸(らくがん)」ということで。